導入事例:日本大学大学院 理工学研究科
ご担当:航空宇宙工学専攻 宮崎・山﨑研究室 佐藤 陸様 / 片岡 星太様
導入機種:L-DEVO M2030 3台
導入日:2016年1月、3月、6月
導入まで:
日本大学 宮崎・山﨑研究室様(http://forth.aero.cst.nihon-u.ac.jp/index.html)では、大型宇宙構造物に関する研究を行っている。研究の中では構造物の「試作」が重要な要素であり、これまでは市販の部材を使用して作製されていたが、研究の過程で、複雑な形状のものを作製する必要に迫られた。そのため、のちに他社3Dプリンターを購入・運用されていたが、造形が粗くあまり使い物にならなかった。
現在:
2016年1月にL-DEVO M2030をご購入。複雑な形状が問題無く印刷できるため、大型構造物の各パーツなどを印刷。在りものを組み合わせていく方法とは違い、思った形状が直ぐに、安価に印刷できる3Dプリンターは、この研究室に無くてはならない存在となった。以降追加で2台導入された。
宮崎・山﨑研究室様では、「展開構造物」の適用例に様々なものを考えられており、取材時には「デブリキャプチャー」、「大型展開構造物」、「スターシェード」についての試作モデルや、詳しい内容をお聞きした。
(下2枚の画像は、「デブリキャプチャー」と呼ばれ、宇宙で1辺2mに展開し、軌道上のデブリ(宇宙ゴミ)の除去をするとの事。リール中心の「巻き取りハブ」、形状を構成する「ジョイント」などはすべて3Dプリンタ(L-DEVO)で印刷されたとの事。)
デブリキャプチャーの実験動画:https://youtu.be/ANl2IXZ80hs
(下2枚の画像は、直径20mに展開する大型の展開構造物の試作品。リール中心の「巻き取りハブ」などはすべて3Dプリンタ(L-DEVO)で印刷している。)
大型展開構造物の実験動画:https://youtu.be/e6p6z1hJjbU
(以下の動画は,「スターシェード」と呼ばれる、宇宙で展開する花弁形状の展開構造物。リール中心の「巻き取りハブ」はForm2、膜を支持する部品はL-DEVOで印刷されている。)
スターシェードの実験動画:https://youtu.be/DZw9tC8fHAs
これまでは研究開発の際、ある程度「出来上がってから」修正箇所が見つかり、再度修正するなど、非常に手間だった。しかし3Dプリンターが来てから、試作の時点で「実物と同じサイズで検証」できるようになった。更には、CADでは分かりにくかった「組み立て手順」なども確認できるなど、圧倒的「効率化」が進められたという。
(下2枚の画像は、実際にJAXAのロケットで打ち上げた超小型人工衛星のモックアップ。組み立てに重要な部品を3Dプリンターで印刷し、基板などの干渉が無いか事前に検証したとの事)
また実験治具の組み立てなどでジョイント部分を印刷、ボルト径など自由に調整が可能な上、コストも安く済み非常に重宝しているという。
(画像:組立て治具)
これらの効率化により研究開発は進み、現在こちらの研究室で開発された超小型人工衛星「NEXUS」が実際に衛星軌道を回っており(JAXAのロケットで打ち上げ済み)、その運用をこちらで行っているという。
(画像:宮崎・山﨑研究室の様子)
またL-DEVOの他にも、光造形式の「Form2」等も使用されており、用途に合わせて使い分けをしているとの事。
今後の展望:
「展開構造物」の運用を宇宙空間で行うとなると、現在使用している樹脂パーツの大部分は放射線の影響を受け劣化するため、「金属」に置き換わるという。そのため「金属での印刷可能な」3Dプリンターを検討されているが、あまりにも高価なため導入は現状難しいという。
3Dプリンターへのご要望:
もっと低価格な金属印刷が出来る安価な3Dプリンターを希望されているが、耐放射線性を持つ樹脂などにもご興味を示された。
最後に:
お話をお聞きする中で「3Dプリンターによって、手軽に自分たちが思った事が、すぐ形にできる」という点を何度かお聞きした。この点は様々な研究開発の現場で重要なファクターであり、特に日進月歩が激しい「航空宇宙工学」現場での3Dプリンター活用はもっと進む事であろうと確信した。同時に研究の効率化に寄与している事は誇らしくも思える、そんな取材だった。