導入事例:大阪市立大学大学院工学研究科(工学部機械工学科)

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ご担当:内田真先生(工学博士) 学生2名(八瀬様・三田様)

導入機種:L-DEVO F300TP

導入日:2018年10月

 

導入まで:

「材料力学」の研究を行っており、材料の強さなどを比較・検証している。2016年に他社の3Dプリンターを購入されていたが、海外製品だったためサポートが切れてしまい、メンテナンス部品の調達が困難になってしまった。そこで卒業された先輩からのお勧めもあり、1年前「L-DEVO F300TP」を購入された。

同時に「3Dプリンターで作った材料の強度評価」という研究もスタートされている。

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現在:

頻繁(ほぼ毎日)に使用されている。

最初の頃は「引っ張り試験片」(主にABS・PLA)を大量に作製。試験片は消耗品(直ぐに変形・破壊)の為、3Dプリンターで「安価に・素早く」造形する事が出来るL-DEVO F300TPは非常に重宝しているとの事。

(画像:これまでに3Dプリンターで作成された引っ張り試験片)

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その後「曲げ試験片」を造形。例として現在、修士課程の八瀬様は4年生の卒業論文で、横に広がる直方体状の内部に、六角形が並ぶハニカム構造を3
Dプリンターで作り出し、曲げ試験での強度変化などを研究。
三田様も円形磁石の集合体を人工周期構造と見立て、曲げ試験をシミュレートするモデルを自作。そのパーツなどはすべてF300TPで造形された。

(画像:ハニカム構造片の曲げ試験の様子)

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また3Dプリンター試験片の造形時の向き(X・Y・Z軸)・設定(壁厚・内部充填)など条件比較の研究もされており、同じ形状・条件下で「サイズによって強度が変わる」点に注目されているとの事。この点は今後3Dプリンターで造形した部品の強度評価基準を決める上で基礎研究として重要な点であることは間違いない。

(画像:上下の白い器具はすべて3Dプリンターで作製。丸い磁石を人工周期構造と見立てたお手製の実験器具)

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今後の展望:

熱可塑性の樹脂でポリエチレンやポリプロピレンなど「伸び」があるフィラメントが有ればもっと大きい変形を出せ観察できるので、試してみたいとご希望いただき、透明なポリカーボネイトも視認性の良さから観察に適しており使用したいと検討されていた。それ以外にも、ナイロンなど別材料での試験なども検討されており、様々な条件での造形・試験を「安価に素早く」行いたいというニーズに3Dプリンターはうってつけだという感想をいただいた。

また今後3Dプリンターでの造形物が実用化された際、バルク材と比較してどの程度強度が弱くなるのかという点も今後の研究目的とされている。

 

Dプリンターへのご要望:

実現できるのなら、分解能(精度・密度の細かさ・安定性)をもっと上げてほしいとのご希望をいただく。現状では若干の空孔(気泡)などの影響で強度が下がる場合も考えられ、それが改善できると更に正確なデータとして信用度の向上が期待できる。また海外での「ミクロサイズでの複雑な内部構造体による全体の物性向上」が話題となっており、そのような使い方ができる3Dプリンターが出るとうれしいとの事。これ以外にも多色印刷・結晶性樹脂の冷却速度をコントロールできるような機能など様々なご希望をいただいた。

(画像:画面左から八瀬様、内田先生、三田様

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最後に:

今回お伺いした大阪市立大学工学部様では、今後の産業界に必須であろう「3Dプリンター造形モデルの物性を様々な条件から調べる」という「基礎研究」分野に3Dプリンターを活用されていた。L-DEVO F300TPの「安価に・素早く・しかも自由に」印刷できるという点は、研究スピード(レスポンス)に大きく影響を与えており、日本の基礎研究力の低下が叫ばれて久しい昨今、我々の知らないうちに日本の大学は、更に進化していると実感した取材だった。

最後までお読みいただきありがとうございました。